「うちの犬、よく舐めてくるんだけど何を考えているんだろう?」
犬を飼っていると、このように感じた経験はないでしょうか。犬の「舐める」という行動には、さまざまな理由があるとされています。
そこで今回は、犬が舐めてくる主な理由を紹介します。また、舐めてくるときの注意点や気をつけるべき感染症についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください!
犬が飼い主を舐めてくるときに考えていること例4つ
飼い主を舐めるとき、犬はどのようなことを考えているのでしょうか。基本的には、以下の4つが考えられます。
- 甘えたい
- 遊んでほしい
- 相手を落ち着かせたい
- 匂いが気になる
それぞれ解説します。
甘えたい
飼い主を信頼している犬は、手や顔をなめることで愛情表現をします。言葉で伝える代わりに、なめることによって「好きだよ!」「一緒にいてうれしい!」と意思表示してくれているんですね。
一方で、「寂しい」という気持ちの裏返しである可能性もあります。犬はもともと「群れ」を作って行動していたとされており、孤独になることが苦手な生き物です。舐めることによって「もっとそばにいてほしいな」「寂しいよ」と伝えているのかもしれません。
遊んでほしい
「もっと遊んで!」「遊ぼうよ!」など、いわゆる「かまってアピール」の意味もあります。舐めることによって、飼い主の意識を自分に集中させようとしているわけですね。
たとえば、ゲームをしていたり動画を見ていたりすると、顔や手足を舐めて邪魔をしてくることはありませんか?これは、放置されることによって、不安感を抱いているのかもしれません。遊んであげたり褒めたりして、寂しさを紛らわせてあげましょう。
ただし、犬の思い通りにしすぎていると、わがままな性格になってしまうこともあるので要注意。やんちゃすぎる場合はすこし待ってみて、落ち着かせることも必要です。
相手を落ち着かせたい
飼い主の気持ちが乱れているときに、「落ち着いて」という意味を込めて舐めることもあります。このように、犬が「自分」もしくは「他の誰か」に対して平静を保つように行動することを、「カーミングシグナル」と呼びます。
たとえば、落ち込んでいるとそばに寄ってきてくれたり、家族内で喧嘩していると間に入ってきたりしてきた経験はありませんか?犬は社会性が高い動物であり、その場の状況に応じた行動を取るとされています。
そのため、「舐める」という行動もカーミングシグナルのひとつである可能性があるでしょう。
匂いが気になる
犬は人間よりはるかに嗅覚が鋭いとされています。嗅覚の刺激を受ける嗅細胞の層で比較しても、人間と犬では以下のように大きな差があります。
- ヒト:500万個
- 犬:2億5千万から30億個(推定)
そのため、「これはなんなのだろう?」「美味しそうなニオイがする」と考えてペロペロと舐めることがあります。
また、場合によっては、匂いから飼い主の不調を感じ取っている可能性もあるでしょう。実際に、がん探知犬は早期のがんを「ほぼ100%嗅ぎ分けられる(※)」とされています。ある日突然、飼い主の体のある特定の箇所を舐めるようになった場合、なにかしらの病気のサインを見つけたのかもしれませんね。
※参考:National Library of Medicine|Diagnostic Accuracy of Canine Scent Detection in Early- and Late-Stage Lung and Breast Cancers
【舐める部位別】犬が飼い主を舐めてくる理由
犬が舐める理由は、部位によって異なるとされています。ここでは、以下3つのケースで理由を説明します。
- 顔や口を舐めてくる場合
- 手や腕を舐めてくる場合
- 足を舐めてくる場合
顔や口を舐めてくる場合
顔や口を舐める基本的な意味は、「愛情表現」や「信頼感」です。そもそも、犬の習性で、子犬が母犬の口を舐めることがあります。これは、母犬に食べ物をねだっている行動とされており、野生の犬の場合、子犬が母犬の口を舐めると、食べ物を与えるのです。つまり、顔や口を舐めるのは、相手のことを「お母さん」「お父さん」と認識している可能性があるということです。
また、犬がかつてオオカミだったことにも起因しているといわれています。オオカミなどのイヌ科の動物は、服従していることを表すために、相手の顔を舐めることがあります。これらの習性から、「愛情表現」や「信頼感」もしくは「服従心」を表しているといえるでしょう。
手や腕を舐めてくる場合
手や腕を舐めてくる場合、「一緒に遊ぼう」と誘っている可能性があります。ボールを投げてくれたり引っ張り合いをしてくれたりと、手や腕が動いているときに「楽しいことが起こる」ことがわかっているんですね。
また、顔や口同様、手や腕を舐める行動は愛情表現や親愛の印とされています。犬から「信頼できる人だ」と認められているというわけですね。
足を舐めてくる場合
足を舐めてくる場合も、手や腕同様、愛情表現や「遊ぼうよ」というサインである可能性があります。また、それ以外にも足はにおいが強い箇所であるため、気になって舐めにきている可能性も考えられます。ただ、人の足は雑菌が繁殖しやすいため、衛生面に注意する必要があるでしょう。
犬が飼い主以外を舐める理由
犬が飼い主を舐めるのは、愛情表現やコミュニケーションの可能性が高いです。ただ、犬は飼い主以外にも多くものを舐めることがありますよね。ここでは以下3つのケースで舐める理由を説明します。
- 自分の手を舐める理由
- 犬同士で舐める理由
- 床や物を舐める理由
自分の手を舐める理由
犬が自分の手を舐める原因は、ストレス発散が多いとされています。たとえば、新しい環境に慣れていないときや何かに驚いたときなどです。また、病気や痛みを感じている場合にも手を舐めることがあります。
これは、「自分」もしくは「他の誰か」に対して、平静を保つように行動するカーミングシグナルのひとつです。舐めることによって、自分の気持ちを落ち着かせようとしているわけですね。基本的に問題行動ではないため、心配しすぎる必要はありません。ただ、異常なほど執拗に舐める場合、原因を特定する必要があるでしょう。
犬同士で舐める理由
犬同士で舐め合う行動は、お互いに信頼関係を確かめ合う行動と考えられます。たとえば、「攻撃するつもりはないよ」と敵意がないことを示したり、「仲良くなろうよ」と社会的なつながりや絆を強めようとしたりしている可能性もあるでしょう。犬は社交性が高く、犬同士のコミュニケーションを通じて自己表現や社会性を発達させるといわれています。
ただし、人間と同じで、相手によってはうまくコミュニケーションを取れないこともあります。相手の犬が不快に感じていたりケンカに発展しそうになったりした場合、すぐに引き離しましょう。
床や物を舐める理由
床を舐める主な理由は、食べ物のニオイがついているからです。そのため、食べ物のニオイを感じると、「ごはんだ」と思ってペロペロと舐めることがあります。
また、ストレスや不安を感じたときにも床を舐めることがあります。例をあげると、留守番のときや飼い主に怒られたときなどです。衛生面を考慮して掃除するとともに、ストレスの原因となっている点を改善するよう心がけましょう。
犬が飼い主を舐めてくるときの注意点
犬が、飼い主を舐めるのは決して悪いことではありません。ただ、いくつか注意点があります。とくに、以下の4つに注意してください。
- 手に傷がある場合は舐めさせない
- 舐めてくる前後で手を洗う
- 家族以外の人の手は舐めさせない
- ハンドクリームに注意する
それぞれ解説します。
手に傷がある場合は舐めさせない
手に傷があるときは、犬に舐めさせないようにしましょう。傷口を舐められた場合、細菌感染などのリスクがあります。風邪や妊娠中など免疫力が低下している場合も同様です。犬の唾液には人間にとって有害な細菌が含まれている可能性もあります。場合によっては、人間の健康に悪影響が出ることもあるため十分注意してください。
舐めてくる前後で手を洗う
舐められる前や舐められたあとに手を洗うことも大切です。人の手には、犬にとって有害なものが付着している可能性があります。たとえば、犬が中毒を起こすチョコを触った後の手を舐めてしまうと、悪影響となる可能性があるでしょう。
反対に、犬に舐められることで人間にとって有毒なものが付着することもあります。犬は排泄物や肛門周辺など、汚い物を舐めていることも少なくありません。そのため、舐められる前後で手を洗うようにしましょう。
家族以外の人の手は舐めさせない
家族以外の人の手を舐めさせないことも重要です。犬が人の手を舐めることは、人にとって感染症などのリスクがあるためです。もし犬が家族以外の人の手を舐めてしまった場合、手を洗うように促しましょう。
ただ、当人が納得している場合、無理にやめさせる必要はありません。舐めることは愛情やコミュニケーションとも捉えられるためです。「舐めちゃだめ!」と厳しく叱ると、学習能力の高い犬は「この人は仲良くしちゃだめな人なんだ」と警戒心を抱くこともあるでしょう。
ハンドクリームに注意する
ハンドクリームを塗った状態で舐めさせるのもよくありません。ハンドクリームには、犬にとって有害な防腐剤や油、アルコールなどの成分を含んでいることがあるためです。
ハンドクリームの中には匂いや味が付いているものもあります。「どんな味なんだろう?」と確かめるために、ペロペロ舐めはじめることも珍しくありません。そのため、わんちゃんが自宅にいる場合は、できれば舐めても問題の少ない、天然素材のみを使用したものがオススメです。
犬に舐められた際に気をつける病気
犬に舐められた際には、さまざまな感染症や病気に注意しなければなりません。とくに気をつけるべきなのは以下の2つです。
それぞれ解説します。
パスツレラ病
パスツレラ菌とは、犬や猫などの口腔内に存在する常在菌です。その菌が、傷口を舐められた場合に、体内に侵入する可能性があります。
感染すると、傷口が赤くなったり腫れたりしてしまうだけでなく、悪化すると炎症が広がり、最悪の場合は関節や骨まで達して、骨髄炎を発症する可能性もあります。そのため、傷口を舐められた場合は、手洗いや消毒などの衛生対策を行い、傷口のケアをすることが重要です。
カンピロバクター症
カンピロバクター症とは、カンピロバクター属という細菌によって引き起こされる感染症です。犬や猫などの体内に潜んでおり、場合によっては人間に感染することがあります。感染すると、次のような症状が現れます。
免疫力が低下している人や高齢者、小さな子どもなどの場合には重症化する可能性もあるため注意が必要です。
犬が舐めてくるのをやめさせる方法
犬が舐めてくるのは愛情表現であるため、無理にやめさせる必要はありません。 しかし、どうしてもやめさせたい場合、 以下2つの方法があります。
- 顔を舐められたくない場合は手で防ぐ
- 舐めること自体をやめさせる場合はトレーニングする
それぞれ解説します。
顔を舐められたくない場合は手で防ぐ
顔を舐められたくない場合は、手で顔を隠して、代わりに手を舐めさせましょう。舐められた後に手洗いをしていれば、感染症のリスクを下げられます。
ただ、上述したとおり、口周りを舐めるのは愛情表現の場合もあります。そのため、あからさまに嫌がったりするのは避けましょう。愛犬の歯磨きや口内ケアを徹底しながら、感染症に注意してコミュニケーションを楽しんでください。
舐めること自体をやめさせる場合はトレーニングする
舐めること自体をやめさせるためには、トレーニングをして「舐めるのはよくないことだ」と理解させる必要があるでしょう。たとえば、舐められたら無視してその場を離れてみてください。すると、次第に舐めても撫でたりしてくれないことを理解し、舐めなくなります。「すこしかわいそう」と感じてしまう方もいるかもしれませんが、感染症などのリスクが怖い場合は仕方がありません。その分、普段から目一杯可愛がってあげてください。
犬が舐めてくるのは甘えたいときが多い
犬が舐めてくるのは、けっして悪いことではありません。むしろ、愛情表現やコミュニケーションの一環であり、飼い主を信頼している証拠です。ただし、感染症など一定のリスクがある点には注意しなければいけません。手洗いや愛犬の口腔ケアを徹底して、幸せなひとときを過ごしてくださいね。